こんにちは、萩原と申します。
9月に開業して以降、経理業務の効率化・電子化の方向性について検討を進めています。事業を始めたばかりの方でも、事業拡大を考える方でも、「電子帳簿保存法」という言葉を一度は耳にされたことがあるのではないでしょうか。
電子帳簿保存法は、これまで何度も改正が行われてきた背景があり、内容も幅広いため、数回に分けて解説していきたいと思います。私自身、実務の中で細かな部分を忘れてしまうことがあるため、整理も兼ねてまとめています。
電子帳簿保存法とは?
電子帳簿保存法とは、企業が保存すべき帳簿・書類(仕訳帳、請求書、領収書、契約書など)を、電子データで保存できるように定めた法律です。
正式名称は「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」(以下「法」と省略します)で、概要は次のとおりです。
① 国税関係帳簿書類(電子計算機で作成したもの)の保存
電子計算機を使用して作成した国税関係帳簿書類については、一定の要件のもと、電磁的記録(または電子計算機出力マイクロフィルム〔COM〕)による保存が認められています(法4①②、5)。
また、取引先から受け取った請求書等や自社で作成した控えについても、一定の要件を満たせば、紙による保存に代えて、スキャナ保存が認められます(法4③)。
② 電子取引における取引情報の保存義務
所得税(源泉を除く)及び法人税の保存義務者が、EDI取引やインターネットを通じて取引を行った場合には、電子取引により授受した取引情報を電磁的記録で保存することが義務付けられています(法7)。これは紙への出力保存が認められない点に注意が必要です。
制度の見かけより単純な“構造”
電子帳簿保存法は複雑に見えますが、構成はシンプルで以下の組み合わせで整理できます。
- 国税関係帳簿書類の種類
- その作成方法(入手方法)
- 保存方法(電子・書面・スキャナ)
1.電子計算機で作成した帳簿・書類の保存(法4条・5条)
自社で一貫してコンピュータで作成した帳簿・書類については、一定の要件(後日解説します)を満たすことで、オリジナルの電子データのまま保存することが認められます。
- 帳簿 → 会計ソフトで作成したデータ
- 書類 → 請求書発行システムなどで作成したデータ
これらは一定の要件を満たせば紙へ出力せず、電子データで保管して構いません。
逆に、手書き帳簿など、そもそも電子で作成していないものは紙での保存が必要です。
なお、電磁的記録には「オリジナルの電子データ」と「COM」がありますが、COMは専用機器を要するなど取扱いが煩雑で、実務上はあまり使われていません。
また、書類については「自社で作成するもの」だけでなく「取引先から紙で受領するもの」もありますが、こちらも要件を満たせばスキャナ保存が可能です。ただし紙を電子化するため、帳簿の保存方法と比べて要件がやや厳しくなっています。
2.電子取引の取引情報の保存(義務)
電子取引とは、取引情報の授受を電磁的方法により行う取引を指します。電子メールで受信した請求書、ECサイトの領収書、クラウドサービスのダウンロード明細などが典型例です。
これらについては、電子データのまま保存することが義務であり、紙に印刷して保存する方法は認められていません。(こちらは(1)の任意保存とは異なり、義務である点が重要です。)
まとめ
以上が電子帳簿保存法の全体像の第一歩となる部分です。
今後の記事では、以下を順番に深掘りしていきます。
- 保存要件
- スキャナ保存の実務
- 電子取引の運用フロー
- 事務処理規程の作り方
(出所:令和7年6月 国税庁「電子帳簿保存法一問一答 【制度の概要等】」 問1)
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する税務判断を示すものではありません。実際の税務判断については、最新の法令・通達をご確認のうえ、専門家にご相談ください。